|
第1回{お火焚きさんの日}
家の庭に大きな鉄製のなべを据えて護摩木を組上げ神かかった巫女さんが拝まはる。
私らはおがみやはんと呼んでいたけど、母は先生と呼んでました。
ちょっと目のするどいおばあさんやった。
白髪をふりみだしてだんだん拝みかたが激しゅうなってくると、神さんがその人にのりうつってきて、神さんのおつげがあります。
神さん「商売もあんじょうなりますぞ 胃の具合ももうすぐ治りますぞ」
父母 「ありがとうございます ありがとうございます」
去年おひたきさんしたときも、確かこのおつげやったと思うけど・・・
護摩木をたいた火におみかんを入れる。
「これよばれたら冬中風邪ひかへんえ。おあがりやす」と母は私に食べさす。
「こんなん食べて風邪ひかへんかったらお医者はんは商売あがったりやないのん」
「神さんがきいたはる。ばちあたりまっせ」
「ばちは太鼓にあたる」
子供たちは火の玉の焼印のおひたき饅頭や柚(ゆう)のおこしをもらう。
このおまんが皮と餡の具合がぴったんこでなんともいえないおいしさ。
こんなん毎日食べられるんやったらおまんやさんにお嫁にいきたい。
これをもらえると思うとあの長い祝詞(のりと)もしんぼうできます。
おひたきの十一月もおわり、お正月も過ぎ、期末テストのとき。
私は風邪をひいて39度もある熱の中で
「おかあちゃん、おひたきのおみかん食べたら風邪ひかんてゆったやないのん」
「あんたがつべこべ理屈ばっかりゆうさかい、やっぱりバチがあたったんどす」
「ちょっとゆうたんをきき耳たてて、神さんも ひ と が悪い。こんなテストの最中にバチあてんといてえな」
おひたきの火の色とその中ではぜていたすっぱいおみかん、柚のおこし。
おひたき饅頭のあっさりした甘さ。
父母の信仰のおかげか、おいしいおまんを食べられるまんじゅうやの嫁さんになることができました。
めでたしめでたし。
|